Story Tellers from the Coming Generation! Interactive fighting novel JOJO-CON
八木山香澄さんの「花京院典明」
ＶＳ
Ａｓｈさんの「サーレー」
| マッチメーカー | ：Ｌ氏ーど |
| バトルステージ | ：山腹の道 |
| ストーリーモード | ：Fantastic Mode |
双方向対戦小説ジョジョ魂
1999年 ドロミテ渓谷
サーレーは立ち上がり……その身を空中へと躍らせた。
下の細い道路まで優に30メートルはある。その中を急降下し……
ビタァッ！
路面に激突する寸前で止まる。自分の衣服を「クラフト・ワーク」で固定したのだ。
そう、彼のスタンドは……触れた物体を「固定」する能力を持つ。
その概念はいたって単純（シンプル）……だが、それゆえに強い。
サーレーは己のスタンド能力に絶対の自信を抱いていた。
花京院は路面に打ち付けられた身体のダメージを堪えつつ、目の前に降り立った男を凝視した。
傍らには気絶した運転手が倒れているが、花京院は一瞥もくれない。
「……チャオ！」サーレーは安っぽい調子で花京院に声をかけた。
「貴様だな……こんな真似をしたのは」重苦しい様子で詰問する花京院。
「そのとーりだぜ。へへ」
「なぜ……こんな事をする」
「簡単な理由さ。目撃者は生かしちゃおけねえ……それが『スタンド使い』であればなおさらだ」
「貴様も……この『先』にあるものが目的か？」
「スィ（ああ）……そのとーりだ。てことァ、おれとアンタはライバルって事になるな」
サーレーは笑みを大きくした。
「おれはまだるっこしい事はキライでなあ……この際だからハッキリさせとくぜ。
おれの『優先順位』は１．自分 ２．障害の排除 ３．目的のモノをいただく事さ。
逃げようったってムダだぜ……決して！ アンタを逃がしたりはしねえ。
今回の任務にそいつも含まれてるんでなァ……」
言いつつおもむろにサーレーは拳銃を構え、引き金を二度、絞った。
「ムッ！」
花京院は身構えたが、サーレーの狙いは別にあった。
ドガドガッ！
「いぎゃああああッ！ 花京院さああああんッ！」
花京院の後方で、運転手が両脚を撃ち抜かれてのたうち回っている。
「貴様ッ…………！」
「おおーっと。そいつが悪りーんだぜ。コソコソと別行動取ろーとしやがるからよォー。
殺さなかっただけ感謝してもらいてーくれーだ」
殺さなかっただけ？ 花京院は顔をしかめた。
この男の口ぶりからして、どのみち自分も運転手も殺すつもりだろう。
なのに敢えて生かしておいたのは……彼のサディスティックな笑みからみても、その理由は明らかだ。
「どうしても……ぼくの邪魔をするというのか」
「ハッ。ったりめーだろ。話聞いてたかァおっさん？」
「いいだろう……この際だ。ぼくも優先順位をハッキリさせておこう。
１．目的の品を手に入れる ２．貴様を倒す ３．自分の身の安全だ……」
「フハハッ！ そいつはいい……殊勝な心がけだぜ」
サーレーは顔では笑いつつも、花京院の態度が気に入らなかった。
（ハン！ 少々ツラがいいってだけで気取りやがって……優等生みてーな模範解答だなァオイ。
だがそーゆーくだらねー事をほざきやがる奴に限って、イザとなりゃあみんな一緒さ。
誰だって『自分の身』がカワイーに決まってるもんなァ）
「いいか……貴様を倒すのは２番目だ。だから警告する。
おとなしくこの場を立ち去れ。そうすれば、危害は加えない」
「あーあーあー。そりゃーまァ、ありがてー事で……」
サーレーは上の空で聞き流しつつ……じりじりと花京院に近づく。
「クラフト・ワーク」の能力は絶大だ。この世のいかなる物体だろうと彼に致命傷を与える事はできない。彼の全身には「固定能力」による自動的なガードがある。
だがその反面、弱点もある。近距離パワー型であるがための、射程距離のなさだ。
故に直接敵を叩くためには、こちらから近づかねばならない。
（向かってくる相手ならブチのめして終わりだがよォー……
さっき見たカンジじゃあ、こいつ……花京院だっけか……の能力は「中〜遠距離」型のスタンドだ。
緑色のヒモみてーなモンを岩に伸ばしてやがったからなァ。
あんまりウロチョロされると厄介だ……さっさとカタをつけるに限るッ……！）
「『クラフト・ワーク』ッ！」
「『ハイエロファント・グリーン』ッ！」
「法皇の緑」は発現すると同時に、上空へ向かってその右腕を伸ばす！
クラフト・ワークの拳が触れる寸前、花京院の身体は上空へと引っ張り上げられた。
「チィ！」サーレーは舌打ちした。「やっぱり『上』へ逃げやがったなッ」
花京院もただ逃げたわけではない。持ち前の冷静さと洞察力で、サーレーの動向を「観察」していた。
（これまでの奴の行動から察するに……奴のスタンドは近距離パワー型のようだな。
そうでなければ、一緒に谷底へ落ちる危険を冒してまで、車の上に飛び乗る必然性がない……
それに車が落下する直前、あれほど『動かなかった』運転手の身体を容易に引き剥がせた。
奴が落下寸前、車から離れて『能力が解除』されたからだ……）
運転手がブレーキを踏めなかった事。ドアのハンドルが開かなかった事。そして、サーレー自身が落下の寸前で停止した事。
いずれも共通するのは物体が動かなくなる、止まる事。すなわち……
（つまり奴のスタンドは……『物体を固定する』能力を持っているッ…………！）
だが花京院にとって未知なのは「物体を固定」するという能力を利用して、サーレーがどのような戦法を繰り出してくるか、という事である。
何にせよ、正面切ってぶつかり合うのは得策ではない。一定の距離を保たなければ……
「もう一度だけ言う。これ以上ぼくを追おうなんて思わない事だ……こっちも時間がない。
これが最後の警告だ。聞き入れないのなら……ぼくの全力を以って……貴様を叩き潰すぞ。
覚悟はいいな……小僧ッ！」
ビクリ。
サーレーは一瞬、背中が泡立ったような感触を覚えた。
（な、何だ今のは……このおれが……『ビビった』ってのかァ？
筋金入りのギャングのこのおれが……こんな女みてーな優男なんぞに……）
だがそんな感覚も一瞬の事。サーレーはへらへらした笑みを引き締めた。
「『追ってくるな』と言われてよォー……このサーレー様がやすやすとケツまくるとでも思ってンのかッ！
逆だぜ……絶対逃がさねえ……（それに奴を追えば、『目的のモン』に早くたどり着けそーだしなァ）
情熱を持ってッ！ てめーを『追跡』するッ！！」
山道より120メートル上空
「法皇の緑」をロック・クライミングの要領で岩の隙間に潜り込ませ、花京院は崖を登っていく。
一方そのはるか下方では……
ガシッ！ ガシッ！ ガシッ！
手に吸盤でもついているかのように、両腕だけを使ってサーレーが恐ろしいスピードで壁面を登ってきていた。
（やはり追ってきたか……岩肌に固定能力を使っているな……）
「ああ〜……まだるっこしいッ！」
サーレーは突如……崖に「垂直」に立ち上がった。
「同じ『固定』すんならよォ〜……手より足のほーが楽チンだよなぁ〜へへへ」
サーレーは軽く「準備運動」をした後、クラウチング・スタートのポーズを取った。
そして……
ドドドドドッ！！
サーレーは角度60度を越える急斜面を文字通り「疾走」した！
「なッ！？」重力を完全に無視した展開に、花京院は狼狽する。
「そーだよ……『崖』と思うからいけねーんだ。
発想の転換って奴だな……こーすりゃ、単なる『下り坂』だぜッ！」
（まずいッ！ この圧倒的スピード……追いつかれるッ）
「『ハイエロファント・グリーン』！ 奴を近づけるなッ！」
花京院の号令とともに、『法皇の緑』の膝から下が空中に扇状に拡がっていく！
「そんなチャチなカーテン生地みてーなのでよォー……おれの『クラフト・ワーク』の攻撃をガードしきれるとでも思ってんのかァ〜？」
サーレーは突進を緩めず、そのまま突っ切る構えだ。
「それは『法皇の結界』……触れる者には死を以って裁きを下すぞッ！」
「ぐへへへへ、そいつぁどーかなァー……！」
サーレーの足が『結界』の一端に触れる。瞬間、トラップが発動！
バシャアアン！！
エメラルド・スプラッシュ！ 輝く宝石の形をした破壊のエネルギーの群れが、容赦なくサーレーへと殺到する！
「なるほど、こいつが『仕掛け』か……クラフト・ワーク！ 防御しろッ！」
ガギィン！ ガガギィィンッ！！
無数のスプラッシュが、サーレーのスタンドの両腕の動きだけで弾かれてしまう。
「気ィ張って、面と向かえば……この程度の『飛び道具』を叩き落すのは、そんなムズかしい事じゃあない……おれのクラフト・ワーク、こー見えてもパワーとスピードはそれなりのモンでなァ！」
クラフト・ワークは無造作に結界に手をかけようとする。
「力任せに『結界』を破る気か……安心するのはまだ早いぞッ！」
引きちぎられた結界が反応し、また別の位置からエメラルド・スプラッシュが飛来する！
「チッ！」サーレーは咄嗟にそれらをも弾く。（クソッ！ うっとーしいぜッ！）
「まだまだ」花京院はニヤリと笑った。
弾いたスプラッシュが「結界」に命中し、再び「スプラッシュ」が飛び出した！
「！……キリがねえッ『クラフト・ワーク』ッ！」
ドゴッ！
間断なく出現するスプラッシュに辟易し、サーレーは岩壁にクラフト・ワークの拳をブチ込んだ。
ビタビタビタァッ！！
砕けた岩の破片が空中で「固定」され、スプラッシュにブチ当たり粉々になる。
破壊の嵐を相殺してどうにかやり過ごしたサーレーは……残った破片の上に軽やかに直立した。
「『結界』は突破したぜェー……覚悟を決めやがれッ！」
だが花京院は動じない。
「いやだね……『覚悟』するのはお前の方だ」
「…………？」
サーレーは不審を抱いた。花京院の位置が先刻と異なっている。
それも「上」へ逃げたのなら判るが……ヤツは横へと移動しているのだ。
「……何のつもりだ？」
「いや、ちょっとね……さっき貴様が跳ね返した『エメラルド・スプラッシュ』のせいで……
厄介な事になったんでな。『避難』したんだ。
この近辺は、天候不順のせいか雪崩や落石がことのほか多いと聞く。
さっき『法皇の緑』を上までやって調べさせたんだがな。もうすぐ……」
花京院の言葉が終わらないうちに、凄まじい激突音が上空から響いてきた。
ゴガッ！ ドゴッ！！
「何ィィィィィィッ！？」
サーレーは思わず絶叫した。崖の上から巨大な岩が次々と落下してきたのだ！
「ほらほら。逃げないと危ないぞ？」からかうような口調の花京院。
彼はといえばすでに「法皇の緑」で安全地帯を調査済みで避難は完了している。
「逃げるだと？ フザけんじゃねーッ！
おれのクラフト・ワークの能力を甘く見るなよッ！！」
サーレーは上空を見極めつつ、クラフト・ワークをスタンバイさせる。
「甘く見てなどいないさ……『エメラルド・スプラッシュ』！」
サーレーに岩が激突する寸前を狙って……花京院は落石に向けてスプラッシュを発射した！
ゴバァン！！
「一個」だった巨大な岩が、「固定」する間際になって無数の石塊に変化したのだからたまらない。
「クソがァァァァアアアッ！！」
サーレーは半ば自棄になってクラフト・ワークの拳を闇雲に放った。
割れた岩の破片のうちのいくつかは固定能力で押し留めたが、その大部分は身体に覆い被さってしまう。目や口の中に細かい異物が入り込み、サーレーは咳き込んだ。
「そこだッ！」
花京院はサーレーの視界を奪った一瞬を逃さなかった。
「法皇の結界」を鋭いナイフのように伸ばし……サーレーを支えていた岩の破片を砕いたのだ！
いかな「固定」しているとはいえ、強度までが上がっているわけではない。
「足場」を失ったサーレーは崖下へ転落して……
ガシガシィ！
……いくかに見えたが、やおら両腕を突き出して、眼前の瓦礫の破片を掴んだ。
「固定」能力が働き、彼の身体は空中にぶら下がるように静止する。
「げぼッ！ グゲゲッげほッげほッ！ い……痛でェーーーーッ！ ちくしょうッ！
可愛い事をやりやがってこの野郎ッ……！
口ン中に砂利入っちまったじゃあねーかッ！！」
花京院は絶句した。あれだけの落石を浴びて、奴の被害は「口の中に砂利」だけだと？
（想像以上に厄介な敵だ……果たして奴を退けて、あの『植物』を手に入れる事ができるだろうか？
いや、やらなければならない……徐倫、そして承太郎のためにもッ！）
再び山道
運転手は両脚の傷の痛みに悩まされつつ、這いずり回っていた。
（あぐゥ〜〜〜〜ッ痛てえよォォォォ〜〜〜〜…………
まったく、なんてツイてねーんだおれって奴ァよォォー……
いくら花京院さんが『スタンド使い』だからって……まさかこんな山奥に来てまで、『スタンドの戦い』に巻き込まれちまうなんてッ……！
今までのSPW財団の統計によれば、戦いに巻き込まれたエージェントの『死亡率』は７割強ッ！
冗談じゃねえ……こんな寂しートコでおれは死にたくねえッ！
第一おれには妻や子供が……将来できる予定だ。もうガマンできねえ。逃げねーと……！）
だが実際のところ、逃げる手段が問題だった。
車は谷底へ転落してしまった。数百メートル先にはバイク……おそらくサーレーのものだろう……が置いてあったが、サーレーの拳銃に脚を撃たれてしまった今、そこまでたどり着く事は困難だ。
「ハッ……そーだ！ イザという時のための携帯無線が……」
あまりに動転しすぎて失念していた。運転手は懐からまさぐるように無線機を取り出す。
「……よかった。壊れてねえ！ 使えるぞッ……」
運転手は藁をも掴む思いで、無線機を作動させた。
「おいッ！ 聞こえるか……おれだ！
花京院さんが『スタンド使い』と交戦してる……車は大破した。
至急応援を頼む！ そーだな……ヘリだ！ ヘリを用意しろッ！
何？ もーすぐ天気が崩れるからヘリは危険？ そんなの知るかッ！
一刻も早く来てくれッ！ いーからさっさとしろォッ！！」
今の彼にとっては、自分の身の安全が最優先。
遥か上空で戦っている花京院の事などは二の次であった。
山道より160メートル上空
空は先刻までとは打って変わって、暗雲がたちこめていた。
その様子を反映するかのように、花京院もまた歯噛みしていた。
（くッ、なんて事だ……あと100メートルも登れば目的の『高台』にたどり着けるというのに……
あの場所まで行きさえすれば……徐倫を救える『植物』を採取できるというのにッ！）
「へへへ……何やら『雲行き』が怪しくなってきやがったなァー……」
サーレーは懐から小石をヒョイヒョイと空へばらまくと、それらを固定し、足掛かりとして花京院の下へと迫ってきた。
「こーゆーシチュエーションをよォ〜……映画とかじゃあ『クリフハンガー』って呼んでるらしーな。
断崖絶壁で死の恐怖と向き合いながらの男たちの戦い！ なかなか燃えるモンだと思わねーか？」
花京院は答えない。サーレーはさらに軽口を叩き続ける。
「ハッ、やっぱ思わねーか……そりゃそーだよなァ。なんたっておれ達はスタンド使い。
花京院……で合ってるよな？ 名前……アンタの場合は、その『ヒモ』みてーなスタンドを使えば、自由に岩に絡みつかせてぶら下がる事ができるし、おれにしてみりゃー『固定』の能力があるから……落下なんざ絶対にしねー。
とどのつまり俺たちは……『常人が抱くであろう恐怖』ってヤツを、最初っから克服しちまってるって事になるよなァ。へへへ」
「……何が言いたい？」
「要するにだ！ この『戦い』を制するためにはよォー……
目の前の敵を『自分の手』でブッ殺さなきゃーならねーって事だッ！！」
ギューン！！
クラフト・ワークの進撃に、ハイエロファント・グリーンが再び結界を張る。
「ケッ！ ワンパターンなんだよォ花京院！ てめーの動きはもう見切ったぜッ！」
とはいえ、サーレーの今いる位置から花京院に一撃を見舞うためには、縦横無尽に張り巡らされた「法皇の結界」をくぐり抜けなければならない。
クラフト・ワークが結界に触れると、三度エメラルド・スプラッシュが猛襲する！
サーレーも腕を振り払い、防御の構えを取る。
しかし今度のスプラッシュは、発射数が格段に増していた！
（先刻までは『一点集中』型のトラップだったが、これは『拡散』型ッ！
上半身はスタンドでガードできても……『足元』まで同時に守りきれまいッ！）
ドバァァァァッ！！
スプラッシュがサーレーに着弾！ 砂煙がもうもうと沸き上がる。
ところが……
「うぐッ…………ああッ…………！」
痛恨のうめき声を上げたのは花京院の方だった。
見れば、左腕から激しく血を流している！
「ぐへへへへへェ……言ったハズだぜ……『てめーの動きは見切った』ってよォー……」
サーレーは会心の笑みを浮かべていた。
彼のスタンド「クラフト・ワーク」の手には……「法皇の結界」の一部分が握り締められている！
「貴様ッ…………それを使ってぼくのスプラッシュを防いだのかッ…………！」
「そのとーりだぜ……おれの『クラフト・ワーク』のパワーとスピードを以ってすれば……
この程度の芸当はたやすいッ！
だがマヌケだよなァー……自分のスタンドで自分をキズつけちまうなんざ……」
花京院は不審を抱いた。サーレーは全くダメージを受けた様子がなかったからだ。
（上半身は『それ』で防いだ。それは分かる……だが、なぜ奴は下半身にもダメージを受けていない？
『スプラッシュ』が命中した手ごたえは確かにあったのにッ……！）
「そしてッ！」サーレーは続けざまに、クラフト・ワークの拳で岩盤を穿つ。
ビキィ！
「この辺りは『落石』や『雪崩』が多い……そーだったよな？」
「まさかッ……」
「今度はこのおれが『利用』する番だぜッ！」
サーレーのスタンドの拳を起点として崖に亀裂が走り……花京院の頭上に岩石が降ってきた！
「！」
「ほらほら、逃げねーと……危ねーぜェ〜〜〜〜へへへへ」冷笑するサーレー。
「くそッ」
花京院は咄嗟に、まだ自由の利くスタンドの「右腕」を繰り出した。
親指と小指に当たる部分が瞬間的に10メートル以上伸縮し、それぞれ左右にある突起に足掛かりを形成する。そして残った手の部分を『滑車』状に変化させ……ロープウェイの要領でその場を離脱した。
「なぁ〜るほど……さっきもそーやって横ばいに移動してたってワケか……」
巨岩はサーレーにも迫り来る……だがそれに対し、クラフト・ワークが唸りを上げた！
「イモイモイモイモイモイモ……イモビリツァーレ！（てめーはここに『釘付け』だ）」
ゴバゴバゴバゴバゴバ……！
クラフト・ワークによるラッシュ！
だが通常のスタンドと違うのは、殴られた対象が「即座に」破壊されない事だった。
「こんだけ殴れば十分だろう。エネルギーは溜まった……『固定』を解除するッ！」
「なッ！？」
ドッガァァァンッ！！
それは悪夢のような光景だった。
固定のエネルギーを「解放」された大岩が、無作為に砕け散り、ナイフより鋭く、銃弾より速いスピードで断崖に次々と突き刺さる！
「しまったッ！」
無論、花京院に向かってもその断片は飛びかかってきた。防御しなければッ！
迎撃用のエメラルド・スプラッシュを放とうとした、まさにその時……
ドゴォ！
飛来してきた岩の破片の裏から……クラフト・ワークの拳が飛び出し、花京院の胸板を捉えた！
「ガブッ！」
「ビンゴォ〜へへへへッ！」
殴る瞬間「固定」の能力を使ったのだろう。花京院の身体は吹き飛ばない。
だがその分、花京院の体内に殴られたエネルギーが蓄積される。そのダメージは相当なものだ。
「うげッ…………ぐへッ！」
込み上げてくる血ヘドまでもが「固定」され、口の中に留まったまま吐き出せない！
「痛てーか？ なァ、痛てーかァ〜〜〜〜？ へへへへへ」
サーレーは破片の裏側に隠れ、花京院との間合いを一気に詰めたのだった。
そして花京院との距離が離れすぎないうちに飛び降り、斜面の上に「着地」する。
「さんざんおれを見下ろしやがって……これでおれが上。てめーが下だッ！
それによォー、とうとう『クラフト・ワーク』の射程距離内に捉えてやったぜ……
てめーはもう逃げられねーッ！ 今度こそ覚悟しやがれッ！」
文字通り「硬直」する花京院。サーレーはゆっくりと拳銃を構えた。
Ｔｏ Ｂｅ Ｃｏｎｔｉｎｕｅｄ ！！
この対戦小説は、八木山香澄さんとＡｓｈさんの対戦ソースを元に、Ｌ氏ーどが構成しています。
解釈ミスもあるかもしれませんがご容赦ください。
八木山さんとＡｓｈさん及び、花京院とサーレーにもありがとう！