Story Tellers from the Coming Generation! Interactive fighting novel JOJO-CON
双方向対戦小説ジョジョ魂
1999年 杜王グランドホテル
……おれだ。突然ですまない。
たまたまお前が、家の近くまで休暇に来ていたと聞いてな。
あつかましい話だが……ひとつ、頼まれてくれないだろうか？
おれの娘の事なんだが……今、高熱を出して苦しんでいると「あいつ」から連絡があった。
「あいつ」の口ぶりからして、状況はかなり切羽詰っているらしい。
おれが危惧しているのは、そう……「覚醒」の可能性だ。
しかしまだ断定はできない。娘が果たして……おれやお前と同じ「素質」を持っているのか。
ひとつだけ、それを確かめる「方法」がある。そのためには……
本来なら、おれが行くべきところなんだろうが……残念だが、今は手が離せない。
「岸辺露伴」くんが、今追っている「殺人鬼」について重要な「証拠」を掴んだらしい。
明日にでも動かなければならない。ヤツをこれ以上、野放しにするわけにはいかないんでな……
……すまないな。こんな事を頼めるのは、お前くらいだ……やれやれ。
ネアポリス レプッブリカ広場
ほう。珍しいな……お前の方から、この話に飛びついてくるとはな。どーゆー風の吹き回しだ？
……いやいやいや。お前の事を疑ってるワケじゃあねーぜ。
これでも、俺はお前のその「野心」……常に「前向き」な態度は買っているんだ。
それに、その様子だと……知ってるよーだな。
４年前、麻薬チームのリーダー『だった』グイレンが、わざわざ遥か北にあるドロミテくんだりの山奥に「何か」を隠し、そのままチームごと全滅しちまったっつー話を……
あの地帯は、天然の要害同然の断崖絶壁。おまけにここ数年、あの一帯だけは天候不順で、雪崩や落石も多く……近くにゃロクに人も寄り付かねえ。「お宝」の隠し場所にはもってこいっつーワケだな。
しっかし、隠した本人がてめーで天候に祟られてちゃあ世話ァねーぜ。
ああ。この４年間、誰一人としてあの「山」に何があるのか……突き止めたヤツはいねー。
第一、何を隠したかすら分かってなかったし、うちのボスは「統制」を加えてパッショーネのメンバーには調査をさせてくれねーし。たま〜にウワサを聞きつけて、パッショーネ以外のギャング連中も探りに来るんだが……必ず死んじまう。そう……「雪崩」だか、「落石」に祟られてな。
だがなァ、よく聞けよ……うちのリーダーはさる筋の情報をたどって、知ったんだ。
あの「山」にあるのは……グイレンの隠した財産だけじゃあねーっつー事実を。
何でも「スタンド」能力の素質を見極める事のできる「何か」があるらしいんだ。
……違う。あのデブの「ポルポ」が持ってるよーな「矢」じゃあねー。別の「何か」だ。
それを聞いて、うちのリーダーも熱上げちまってよ……
まァ確証とまではいかねーが……もしこいつを、うちのチームが手に入れる事ができれば……
俺たちのよーな人間を「精鋭部隊」として自在に作り上げる事だって夢じゃあねー。
おめーの言葉を借りるなら、あの「ポルポ」や……「暗殺」チームに匹敵するぐれーの強力なチームに「のし上がる」事だってできる！
ま、お前の興味はその「財産」なんだろーが……
あ、俺？ 俺は遠慮しとくぜ。確実に「財産」があるっつー保証もねーし……大体寒ィのはニガテなんだよ。俺は……
お前もカネにばかり目ェくらませんじゃあねーぞ。
リーダーの話じゃあ、うまくすれば目先の「カネ」なんぞよりよっぽど価値のあるシロモノかもしれねーんだぜ。
そーか……分かった。ペペにはそー伝えとくぜ。
お前の「能力」なら……これしきの任務に遅れを取る事ァねーだろう。
だがこれだけは肝に銘じとけ。これはペペ「直々の」命令……しかも「極秘任務」だ。他の仲間や、別の組織の者にこの事が知れたら、ボスにバラされちまうからな。
どんなトラブルがあろーと、ヤツの「期待」だけは……決して裏切るんじゃあねーぞ……
フロリダ 空条家宅
鳴り響いたインターホンの音に、母親は急いで玄関に向かった。
「来てくれたのねッ。承……」
「……ガッカリさせるようですが……ぼくは承太郎ではありません」
訪問者の姿と言葉に、母親は警戒するように息を呑んだ。
「あ、あなたは……」
「突然の訪問で、驚かせてしまった事は謝ります。ぼくは花京院典明……」
花京院が事情を一通り話すと、母親は複雑な表情で中を案内した。
２階にある部屋に通される。中では苦しげにうなされている少女が、ベッドに横たわっていた。
花京院がドアを開ける音に、わずかに反応し……彼女は首を少しだけ傾けた。
「…………ハア、ハア…………『パパ』…………なの？」
弱々しい声で、救いを求めるように……少女は言葉を紡ぐ。
「いや、ぼくはきみのパパじゃあない。ぼくは……花京院典明。
きみのパパの……古い友達だ。パパに頼まれて、ぼくはここに来た。
はじめまして……徐倫（ジョリーン）」
「……パパ、じゃあない……んだ……
どうして、パパ……来てくれないの？ あたしのコト……嫌いだから？
それとも、忘れちゃったから……？」
「……誰が、そんな事を言ったんだい」花京院は静かに尋ねた。
「だってママ……いつもさびしそう……
あたしが、ビョーキになって……ママ、いっしょーけんめいパパを探そーとして……
電話でパパと話してて……話がおわったら、ママ……泣いてたの。涙は、流さなかったけど……」
６歳の少女が、高熱に苦しんでいるにも関わらず……よく観察している。
子供というものは、大人が思っているよりもずっと多くの事を、細かい事を、つぶさに見ている。
そして、大人たちよりもよっぽど鋭敏に、周囲の空気を感じ取るものだと……とある心理学の本で読んだ事があった。花京院もこの説の支持者の一人だ。何しろ彼自身……かつて、そうであったから。
こういった時に嘘は禁忌だ。花京院は徐倫を元気づけるべく、率直に自分の考えを述べる事にした。
「いいかい、徐倫……今、きみのパパとママは、事情があって離れて暮らしているけれど……
きみのパパは……承太郎は、きみを『嫌い』だなんて思った事は、一度もないはずだよ。
承太郎は今、悪いヤツと戦っている。日本にある『町』の人々と、誇りを傷つける邪悪なヤツと。
でもそんな最中でも……承太郎はきみやママを忘れた事なんて一度だってない……ぼくが請合うよ。
きみが心配だからこそ、ぼくに助けを求めたんだからね」
花京院は徐倫の傍に寄り……熱で赤らんだ彼女の額にそっと触れた。
（ひどい熱だ……こんな状態で口を利ける事じたい、奇跡に近い……
やはり承太郎の危惧していた事は……）
さらに詳しく「診断」する必要がある。
花京院は昔、ジョセフ・ジョースターに習い「法皇の緑」で人体の内部を探り、その異常を調査するすべを心得ていた。
スタンドを発現させ、糸状にして徐倫の鼻腔に潜り込ませようとする。すると……
「……みどり……いろ……キレイ…………それ、お兄ちゃんの……？」
「！」
花京院は驚愕した。
（ぼくと承太郎の区別もつかないほど、視力を侵されているのに……
徐倫には……「スタンド」が見えている！？）
疑念は確信に変わった。
かつて承太郎の母であるホリィが、自らのスタンドに抵抗できず、その生命を脅かされたように……
彼の娘である徐倫もまた、同じ症状に蝕まれてしまっている！
10年前のあの時は、「ＤＩＯ」という元凶を打倒する事で解決したが……今はそんな手段はない。
承太郎が教えてくれた……あの「方法」を除いては。
（徐倫はホリィさんと違ってまだ子供だ……スタンドにそれほど抵抗力があるとは思えない。
保って、あと４、５日かッ…………！）
花京院は徐倫の母親を急ぎ説得した。
「今の状態が続けば……命を落とす危険があります。
ぼくの紹介する病院にすぐに連絡を……心配しないで。費用はぼくや承太郎が持ちます。
徐倫を……あなたの娘を救うためには……早急に手を打たなければならないッ！」
ボルツァーノの東 ドロミテ渓谷の山道
花京院は徐倫をＳＰＷ財団本部ダラスにある総合病院に保護させる手続きを済ますと、休暇を返上してイタリアへ飛んだ。
承太郎の言っていた「徐倫を救う方法」のある……北イタリアはトレンティーノ・アルト・アディジェ州と、ヴェネト州の境にあるドロミテ渓谷を目指して。
ドロミテ渓谷はその美観やスキー場で有名な観光名所である。
花京院は州都トレントから国鉄でさらに北のボルツァーノへ行き、そこで待ち合わせていた付き添いのＳＰＷ財団の運転手の車に乗って、渓谷へ向かうべく山間の細い道を進んでいた。
「承太郎は……なぜこんな場所を知っているんだ？」
「なんでも個人的な『調査』だとかで、４年前……この地を訪れた時に、偶然発見したそうです。
この場所にしか生えていないという、特殊な『植物』を……
もっともわたしも、空条さんの言以上の事は聞いておりませんので、詳しい事は……」
「そうか…………」
車が山道を進むにつれ、交通量も目に見えて減っていく。
やがて渓谷に入った。雄大な岩山の景色が視界に飛び込んでくる。ところどころ白い斑点のように雪が積もった切り立った絶壁。その中を細いロープのように曲がりくねりながら続く頼りない一本道。崖下は100メートル以上の高低差があり、その底にはやはり細長い川と、その周辺に点在している家屋がちらほらと見える。
カーブに差し掛かったが、運転手はさしてスピードを緩めず曲がった。
「このあたりは傾斜も激しい。もう少し速度を落としたほうが……」
「心配いりませんよ」花京院の言葉に、運転手は自分の運転技術を微塵も疑っていない様子で応じた。
「このあたり一帯は、天候が崩れない限りは安全なんです。あなたの目的地であるあの『場所』は別ですが……それにこの近辺の住民は、『タタリ』を恐れてこの道に近づこうともしませんしね」
「祟り…………？」異国でそんな言葉を聞くとは思わず、花京院も聞き返す。
「空条さんから聞いてません？ ここからもう少し先に行くと、雪崩や落石なんかの事故が多いんです。天候が不安定なせいでしょうけどね。
もっとも、そのせいで滅多に人も通らないんで……実害は少ないんですがねえ……おっと！」
急に運転手がハンドルを切ったため、花京院は危うくつんのめるところだった。
「どうした？ 何があったんだ」
「クソッ！ いきなりバイクが捨ててあったんですよ！」運転手は忌々しげに毒づいた。
「ただでさえ狭い道だってのに……事故ったらどう責任取るつもりだ！」
想像していた以上に、短気な性格のドライバーに……花京院は嘆息した。
ふと景色を見ようと、遠くの山々を眺めると……
「…………？」
花京院は目を疑った。なんだ…………アレは。
「今のは…………」
「か、花京院さんも……見ましたか」
花京院の言葉を遮った運転手の言葉は……震えていた。
「きみも……『見えた』のか？」
「え、ええ……ハハ。偶然、ですねえ……まさか『崖の真ん中』に人が立ってるなんて……
あるワケないか。だってホラ、もう見えないし……」
ガン。
突如、頭上で何かがぶつかった乾いた音がした。
「ヒッ…………い、今のは…………？」色めき立つ運転手。
「分からないが……落石なんかじゃあないようだな。
車の上に当たったなら、崖下に落ちていくのが見えるはずだ」
花京院の口調はクールだった。その冷静さが……放心していた運転手を現実に引き戻した。
「そ、そんな…………それじゃあ一体…………？」
「何かが妙だ……いったん車を止めたほうがいい。これ以上は……！」
花京院は運転手の異常に気づいた。先刻よりも急なカーブが眼前に迫ってきたというのに……車はまるで減速する気配を見せない。
「……おい、何をやってる！ このカーブはまずい。早くスピードを……」
「そ、それが…………さっきからやってるんですが……ブレーキが『踏めない』ッ！」
運転手は悲鳴を上げた。
「そんなバカなッ…………まさか、これが『タタリ』なのかァ…………！
うひィィィィイイイイッ！？」
ゴオーッ！
このままでは、車は崖下へ飛び出してしまう。
花京院は脱出を図ろうと、ドアを開けようとしたが……
（何ッ！？ ドアのハンドルも『動かない』……！ どういう事だッ…………！）
「くッ…………『法皇の緑』（ハイエロファント・グリーン）ッ！！」
咄嗟に花京院はスタンドを繰り出し、後方のガラスを破った。
（車は見捨てるしかないッ…………！）
シュルシュルシュル…………！
間一髪で運転手をスタンドの右腕で縛って抱え、左腕で傍らにあった岩の突起を掴む！
ビシィ！
「法皇の緑」の左腕が、幾重もの紐状になって突起に絡みつき……花京院と運転手は道路に投げ出された。
「うぐッ…………！」
身体をしたたかに路面に打ちつけ、花京院はうめいた。
バン！！
次の瞬間、制御不能の鉄塊は猛スピードで渓谷の底へダイブした！
炎上し、大破しながら落下していく車の爆音を遠くに聞き、花京院はよろよろと立ち上がった。
「……『祟り』なんかじゃあない。そんな非現実的なものがあるわけがない……
今のは……『スタンド』攻撃ッ…………！」
Story Tellers from the Coming Generation! Interactive fighting novel JOJO-CON
八木山香澄さんの「花京院典明」
ＶＳ
Ａｓｈさんの「サーレー」
| マッチメーカー | ：Ｌ氏ーど |
| バトルステージ | ：山腹の道 |
| ストーリーモード | ：Fantastic Mode |
双方向対戦小説ジョジョ魂
Ｔｏ Ｂｅ Ｃｏｎｔｉｎｕｅｄ ！！
ＭＭも久方ぶり〜な邪悪なるＬ氏ーどでごぜーます。皆様ごきげんいかが〜？
私がそーであるよーに、今回チョイスされた２人もジョジョ魂では長らくご無沙汰ですな。
今回は珍しくシンプルに……明るくクリーンなマッチメークを目指せそうです（笑）
でも、どっちも任務に失敗したらリスクがでかいので、負けないよーに頑張ってね〜！（やっぱ邪悪）
八木山香澄さんとＡｓｈさんは、次回ラウンド２に向けて「何がしたいか？」「何をしようとするか？」をテキトーに書いてメールでお送り下さい！
この対戦小説は、八木山香澄さんとＡｓｈさんの対戦ソースを元に、Ｌ氏ーどが構成しています。
解釈ミスもあるかもしれませんがご容赦ください。
八木山さんとＡｓｈさん及び、花京院とサーレーにもありがとう！