Story Tellers from the Coming Generation! Interactive fighting novel JOJO-CON
双方向対戦小説ジョジョ魂
エピローグ その１
「惨劇」が終わり……館には静寂が訪れた。
レジエとキャロルは、２人でパーティー会場に足を運んだ。
好き放題に荒らされ……瓦礫や残骸が散乱している。
「師範にきみの『血』を与えたのは……かつて、きみも同じ事をされ、知っていたからかい？」
レジエはためらいがちに尋ねた。キャロルは首を振った。
「確かにわたしは知っていた……でも、それだけじゃあないわ。
メッシーナさんが首を刎ねられた時……彼の声が聞こえたような気がして……」
「師範の声が……？」
「……気のせい、だったかもしれないけどね」
キャロルははぐらかすようにレジエに背を向け、打ち捨てられた舞台の上に立った。
「大叔父様から『波紋使い』の怖さを聞かされてから……
正直な話……最初にレジエを見た時は、冷たそうな人って思ったけれど……
でも今は違う。あの時……勇気を出してあなたを助けてよかったと思ってる……
出会った『波紋使い』が、あなたでよかったと……本当に思ってる……
感謝しているわ。あなたがわたしに、さらに強い勇気を与えてくれた」
「いや……わたしなどきっかけに過ぎない。きみが『人としての誇り』を取り戻そうとしたのは……
間違いなくきみの意志だ。師範も言っていた通り」
レジエはかぶりを振って、はにかんで見せた。
「キャロル……きみの望みは果たされたね……」
レジエはキャロルに対し、漠然とした葛藤を覚えていた。
キャロルを殺したくない。いや……失いたくはない。
フォークランドの記憶DISCから、キャロルの過去をも知り……単なる哀れみ以上の感情が、レジエの心には芽生えていた。
「わたしには……あと３つ、望みがあるわ……聞いてくれる？」
キャロルは悪戯っぽく微笑んだ。恋人に欲しいものをねだるように。
レジエは頷いた。
「わたしは、ずっと前から……『光』に憧れていた……
大叔父様は、そんなわたしのために……この白いお屋敷を建ててくれたの。
いつの日か、朝日の中を駆け抜けてみたい……ずっと、そう願っていたわ……」
キャロルはうっとりした表情を浮かべ……レジエの目を見た。
「でも、どうしても独りで朝日に身をさらす勇気が湧かなかった……
お願いレジエ……わたしと一緒に……朝日を眺めてくれる？ わたしを最後まで見届けてくれる？」
「……いいとも、しかし……」
レジエは言おうとした。一緒に暮らさないか。SPW財団なら……キャロルの呪われた身体を元に戻す方法を見つけ出すかもしれない。共に生きよう、と……しかし、その言葉はキャロルの細い人差し指に遮られた。
「レジエの言いたい事……わかるわ。でも……ダメなの。
わたしは、今まで大叔父様と一緒に……多くの人を糧として殺めてしまった。
それに……今でもわたしは『血の渇き』には逆らえない。もし血に渇いたら……レジエ、たとえあなたでも襲いかかって血をすすってしまうかもしれない……それはもうイヤ。自分が自分でなくなるのを見るのは……もう沢山だわ」
おどけてみせたキャロルだったが……語尾が震えていた。
「メッシーナさんの言葉を借りるなら……わたしは５年前、階段から足を滑らせて死んでいた。
でもレジエ……本当の『死』って……何の事だか分かる？」
「本当の……死……？」
「本当の死は……自分の事を覚えてくれる人が……誰もいなくなる事。
だから人は、本当の意味での『孤独』には……誰にも知られない死には耐えられない。
わたしも、メッシーナさんも、お父様も、大叔父様も……レジエが覚えていてくれれば……ずっと生き続ける事ができるわ。だからレジエ……わたしの事、みんなの事……決して忘れないで」
「もちろんだ。決して忘れたりは……しない」
レジエの表情は自然とほころんだ。
「ありがとう」キャロルはとびっきりの笑顔を見せ、告げた。
「じゃあ、最後のお願い……今晩、わたしと一緒に……踊ってほしいの。いいかしら？」
レジエの答えは、決まっていた。
月夜の晩に、悪魔と踊った男がおったとさ。
悪魔は朝日とともに消え、男は自分の家に帰った。
男は何も変わったところはなく、家族は男の無事を喜んだ。
しかし、男はたったひとつだけ、悪魔に盗まれていたものがあったのさ。
男は悪魔の事を、どうしても忘れられなかった。
子供たちは囃し立てたのさ。「男は心を盗まれた。悪魔に心を盗まれた」
メッシーナ……レジエの成長を見届け、名誉の戦死を遂げる
レジオン・Ｅ・ボナパルト（レジエ）……師範とキャロルの死を乗り越え、ヴェネツィアの波紋修行者たちの筆頭として名声を高める。
ポロック理事……忘れかけられていたが、どうにか救出される。年齢は元に戻っていたが、やや老けたかもしれない。この事件をきっかけにして、物事を後回しにする事を嫌い、積極的に対吸血鬼対策の研究に邁進する事となる。
キャロライン・フィリップス……望みを果たし、木漏れ陽の中に消える
石仮面＆赤石の破片……レジエが強引にミラションから取り戻した（笑）
エピローグ その２
アメリカ、フロリダ州。グリーンドルフィン・ストリート刑務所。別名「水族館」と呼ばれるここは、ミラションの服役している刑務所だ。今日は彼女の仮釈放期間も過ぎ、刑務所に再び戻ってくる日である。
「大変お世話になった神父様に……お会いしたいのですけれど」
ミラションの要望は当然の事ながら、受け容れられ……程なくして神父が現れた。
２人は刑務所内の礼拝堂の中へと入っていく。
「お帰り……といってもいいものかは分からないが……さっそく本題に入ろう。
『DISC』は……持ってきたかね？」
「はい……こちらにございますわ」
ミラションはDISCを一枚取り出し、手渡そうとした。
「きみには色々と話をうかがいたいが……残念ながらあまり時間がない」
神父は近づいてきたミラションの脳天に……スタンド「ホワイトスネイク」の手刀を放った！
と同時に、ミラションの頭から２枚のDISC……「記憶DISC」と「スタンドDISC」……が脈打つようにせり出してきた。
「あれこれ質問するのは面倒だからね……『記憶DISC』を覗くのが一番手っ取り早い」
神父はDISCを手に取って眺めた。
DISCの上に……小柄な老人が歯磨きをしているシーンが映り、たっぷり５分間は磨いた後、うがいをしてからゆっくりと振り返った。
『ほひひひひひ……お主ならこのDISCを覗くじゃろーと思ってのォ。メッセージを入力しておいたぞい』
異様な笑い声を上げ、怪異な老人は切り出した。
『ワシの名はナジーブ・ホスニ・マハフーズ上院議員。お主……ホワイトスネイクさんじゃったか？
まあとにかく、お主に取引を持ちかけようと思っておるのじゃ』
DISCの中のナジーブは、１枚のDISCと……『骨』を持ってピラピラと振ってみせた。
「これはッ…………！？」神父の表情が強張った。
『フォークランド卿の屋敷に行った時……偶然にもこの骨を見つけてのう。
何でも、お主がフォークランドにDISCを植えつけたのは、コレが目的だそうじゃな？
お主もまんまと騙されたのう。フォークランドのヤツ、お主が接触した５年前どころか、ずっと前からコイツを持っておったのじゃぞ？……もっとも、自分では気づいてはおらなんだがな』
ナジーブの人を食った態度を……神父は無言で見守った。
『何の事はない謎じゃったぞい……かのウィルソン・フィリップスの墓の中に一緒に埋まっておったんじゃからのォ〜ガハハハッ！
だが勘違いせんでくれ。ワシはお主とは友好な関係を築こうと思っておるのじゃ。
あくまでも対等に、フェアに……取引をしようじゃあないか。の？』
取引とは……「フォークランド卿の記憶DISC」及び「骨」と引き換えに……自分にも神父の計画の秘密を教えろというものだった。友好の証として、フォークランドの「スタンドDISC」は返還しておく、と。
『返事を寄越す際には……またミラション君をこちらに連れてきてくれたまえ。
色よい返事を待っておるでのゥ〜ほひひひひひひひひひひひひ…………』
老獪な小男のメッセージが途絶えた。神父は思わず、DISCをグシャグシャに握りつぶした。
（くっ…………このわたしを、ここまでコケにしたヤツは始めてだ…………）
「２……３……５……７……11……」
気持ちが怒りと焦りで昂ぶるのを感じ、神父は素数を順番にブツブツと呟いた。
握り締めたDISCを離すと、弾力によってすぐに元の円盤の形に戻る。
（考えようによっては……好都合だ……長年の謎をこいつが突き止めてくれたのだからな……
過程など問題ではない……『骨』を手に入れる。その結果が重要なのだ……
わたしの求める『天国へ行く方法』を達成するためには…………）
神父は考える。ミラション一人では甚だ不安だ。誰か信頼のおける「刺客」を差し向けて……場合によっては味方に引き入れてもいいし、邪魔になるようであれば……消せばいいだろう。
「今はまだその時ではない……焦る必要などないのだ……」
神父はそう自分に言い聞かせた。
ミラション……今後も神父とナジーブの体のいい道具として利用され続けた。
ナジーブ・マハフーズ……神父と口八丁手八丁の交渉を続けつつ、エジプト議会での発言力をますます強めていき、与党の第三次黄金時代の立役者となる。
神父……結果論となるが、「骨」は手に入れる。
DISC（ハイウェイ・トゥ・ヘル）……刑務所内の囚人のひとりに使用される事となる
エピローグ おまけ
フォークランド卿の館で起こった騒ぎを聞きつけ、地元の警察が大勢駆けつけた。
幸い、館の外には被害は出ず、ナジーブの計らいでレジエやミラションたちがお咎めを受ける事はなかったが……翌朝、警官の一人の変死体が発見された。
その死体は、身元を割り出すのにそれほど時間はかからなかったが、実年齢に比べ、やや老け込んでおり……その点だけは不審がられたが、大した問題には浮上せずに、記録書類の片隅に片付けられてしまった。
「君、大丈夫かい？ 中の様子はどうなっているんだ」
「ごめんなさい、あたし……無我夢中で逃げてきて、何が何だか……みんな、怪物になってしまって」
「怪物？……まあそれより、君、左手に怪我をしているね。大丈夫かい？」
「あまりいいとは言えないわ……『くっつけた』ばかりで、なじんでいるとは言えねーしなァ！」
ギゴギギゴ……ビグビグビグビグッ！
「右手」に変わった左手……スタンド「グローヴ」によって、警官は年齢を加算され一気に老け込んでしまう！
金髪の美女……コパーヘッドのアシスタント・ガールズの最後の一人……は見る間に年端もいかない10歳前後の少女の姿に若返った。
「ケケケケ……これが俺様、『両右手の男』（今は女だが）の最後の秘密だぜェ……！
『スタンド』自体に意志が宿り、年齢だけじゃなく肉体もとっかえひっかえ殺しを楽しんできたのさァ！
ギャーハハハハッ！」
胸を貫いた警官の死体を放り捨て、少女は夜空の中に身を躍らせた。
「これでオレは完全に自由だッ！ ザマァーみやがれェーギギヒヒャハハハハァーッ！！」
「ねえねえ知ってる？ 『両右手の怪人』の話」
「夜な夜な人を襲う殺人鬼のこと？ 最近有名な都市伝説よね」
「若い女ばかりターゲットにするらしいわ。しかもそいつに襲われたら……シワシワの婆さんになって粗大ゴミのよーに捨てられて殺されるってウワサよォーバッカバカしぃー！」
「……なんでバカバカしいなんて言えるの？ 怖いじゃない」
「はあ？ アンタ信じてるの？ バッカじゃない。そんな非現実的な話……」
「フーン、そう……今あなた……そいつと話してるのに」
「…………え？ ちょ、ちょっと…………」
ギゴギギゴギギゴッ！
「てめェーこのオレ様をナメやがってッ！ バラバラに切り刻んでやるぜェーッ！！」
フォークランド卿……死亡
ウィリアム・フィリップス……死亡
ゴードン（仮名）……コパーヘッドのアシスタントの肉体を乗っ取って逃亡。「両右手の怪人」となって復活し、都市伝説となる。
ミスター・コパーヘッドとアシスタント３人……死亡
その他大勢……軒並み死亡
ＥＮＤ
この対戦小説は、柴犬さんと蛙男さんの対戦ソースを元に、Ｌ氏ーどが構成しています。
解釈ミスもあるかもしれませんがご容赦ください。
柴犬さんと蛙男さん及び、ミラションとメッシーナ、そしてナジーブとレジエにもありがとう！