Story Tellers from the Coming Generation!
Interactive fighting novel JOJO-CON
双方向対戦小説ジョジョ魂ミュージアム
「叛逆者たちの狂宴」 第二幕
求道者の妄執 ＃05
ワムウ VS エシディシ
１．ファウンダー、チェイサー、シーカー
「発見者（ファウンダー）は『槍』を運び、
追跡者（チェイサー）は求道者（シーカー）を捜し出す。
そして……求道者のみが『槍』による栄光を掴むであろう。
彼らの死を見届けし者が、彼らの『役割』を引き継ぐ事を、ゆめゆめ忘れるなかれ」
ピラミッドの最奥部。
古代の遺跡らしからぬ、現代文明じみた整頓された部屋があった。
ＣＤプレーヤー、冷蔵庫、エアコン、パソコン、ＭＤウォークマン、ビデオデッキ……ありとあらゆる電化製品が、部屋の中に整然と並べられている。
そんな快適な部屋の中で、パソコンをいじりつつ、テレビ画面に魅入っている男がいた。
キツネ目の痩せた中年男。30代後半くらいだろうか。
彼は仲間たちから「テクノマンサー」と呼ばれている。意味は「電脳世界の魔術師」。確か昔のゲームで用いられた造語だったと、彼は記憶しているが、響きは悪くない。彼はこの名前を気に入っていた。
彼もまた「叛逆の徒」のひとり。「逆位置の魔術師」のカードの暗示を持つスタンド使いであった。
テレビ画面は２つに分かれており、それぞれピラミッドの西と東の映像を映し出している。
すなわち、東方仗助とユード・イオの戦い。ワムウとエシディシの戦い。
テクノマンサーは、パソコンのメッセンジャー機能を使って、誰かと回線を通じて会話しているようだった。
《 さすがだね、彼は……こちらが用意した最初の『ヒント』だけで、エシディシに対し疑惑を抱いた 》
《 ワムウも馬鹿じゃあない……何しろ彼は、仲間からも「戦闘の天才」と言われていたそうだからな 》
メッセージの下では、次のようなウィンドウが表示されていた。
＜プロジェクト・ニルヴァーナ：プログラムNo.C
コードネーム『Deranged Harmit』……システム稼動中＞
《 どちらが勝つと思うかい？ 》
《 さあな……どっちが勝つにしても、我々の計画に大して支障はないんじゃあないか。何しろ、追跡者（チェイサー）が死んだところで、殺した者が新たなチェイサーになるだけだからな 》
《 いや、作戦うんぬんじゃあなく、純粋にきみの意見を聞いているんだが 》
テクノマンサーは、少しだけ考えて指を止めたが……すぐにキーボードの上で手を滑らせた。
《 エシディシだろうな……ワムウには『柱の一族』どうしで、本気で殺し合った『経験』がない。これはとても『致命的』な事だ 》
２．争戦
――法に曰く、「争地には攻むることなかれ」
エシディシは上機嫌で、とくとくとワムウに向かって語り始めた。
「そのドノヴァンという男はなァ……人間だった頃はナチスの親衛隊だった……相当な体術の持ち主だったそうだ。
サボテンにくくりつけられたまま、みじめな死を迎えたそうだが……賢者ザフーによって石仮面をかぶせられ、めでたく吸血鬼として生まれ変わった……」
紹介されたドノヴァンは、エシディシとは対照的にニコリともしない。
「しかしだ……いかな格闘のプロとはいえ、吸血鬼と我ら『闇の一族』とでは、力に差がありすぎる……
やはり、貴様の相手はこのエシディシがせねばなるまいなぁ〜〜〜〜くっくっくっくっ」
エシディシがパチンと指で合図を送ると、ドノヴァンは即座にピラミッドの外へと飛び退り、闇の中に消えていった。
「ついてくるがいい、ワムウ……我らの決着をつけるために、相応しい闘技場を用意してあるッ！」
「……………………」
くるりと踵を返すエシディシ。ワムウは無言でその後を追った。
（エシディシ様……物腰といい、その言葉といい……２千年前のあの時のままだ……
本当に、ニセモノなのか…………？）
咄嗟に偽者と断定したものの、ワムウの心にはかえって疑念が膨らんできていた。
もし彼が本物のエシディシなら？ 彼の言う通り、彼に協力するべきではないのか？
カーズ、エシディシ、ワムウ。再び三人で、全人類に対し戦いを挑む……それも悪くはあるまい。
（無論、ワムウにとってのそれは、純粋な『闘い』の希求である。人類の支配云々は、カーズたちに任せればいい）
しかし……ワムウの戦士としての、いや……「戦闘の天才」としての勘が告げていた。
エシディシに従っていては、真の闘いの喜びを得る事はできないと。
生きて再びカーズとめぐり合う事は叶わないと。
エシディシと共にたどり着いたのは、ピラミッドの地下。無数の切り立った岩が剣山のように立ち並ぶ、底なしの奈落だった。
どこからともなく、死人の悲鳴にも似た不気味な風の音が、「闘技場」の中を駆け抜けていく。
「ここだ……」エシディシは軽やかに跳躍すると、鋭く足場の悪い岩山の一角に着地した。
「この『闘技場』は、底がどこまで続いているのかは誰も知らん……落ちたが最後、二度と這い上がってはこれんだろう。
それは我々といえども例外ではない……現に何匹もの吸血鬼どもが、この奈落に落ちて消息を絶っているのだ……」
饒舌なエシディシ。ワムウは微動だにせず、エシディシの眼を睨みつけている。
「くっくっく……慎重だな、ワムウよ……昔、お前に教えたなァ。『不利な地形では、無理に攻めてはならない』と。
だがッ！ それは一箇所にじっと縮こまっている事を意味しているのではないぞッ！！」
エシディシの殺気が膨れ上がった。両腕をまっすぐに突き出し、指の爪の隙間から、勢い良く血管針が飛び出した！
ビュルンビュルルルルォアッ！！
「来ないのなら、こちらから行くぞ……くらってくたばれ
『怪焔王の流法』ッ！」
ギャアアアン！！
計10本の血管針が、思い思いの軌道を描いてワムウに向かって突き進む！
ワムウが……動いた！
３．夜戦
――法に曰く、「夜戦には火鼓を多くす」
ワムウは跳んだ。
しかし、エシディシの放った血管針はその動きを読んでいたかのように、即座に軌道を変える！
ギュアッ…………ドゴォン！
10本のうち２本が、たった今ワムウの立っていた足場に突き刺さり、溶岩のように煮えたぎる血液が噴出して粉々に打ち砕いた。
逃走経路を塞がれた。だがワムウは一瞥もくれない。
「ククク……どこまで逃げるつもりだァワムウッ！」
エシディシはニヤニヤ笑いのまま、跳躍するワムウから目を離さない。
地下の洞穴の天井は低い。ワムウの跳躍力を活かしきれない。
天井を蹴って別方向に逃げようにも、エシディシの血管針はそれをも予測し回り込んでいる。
常識で考えれば、詰み（チェック・メイト）！
だが、ワムウは……
ドギュグムグムグムグム…………！！
ワムウの肉体は勢いを失わず、天井の中に吸い込まれるように消えていく。
いや正確には、天井のヒビ割れのわずかな隙間に、身体を折りたたんで侵入しているのだ！
ドパァン！
エシディシの血管針が天井を刺し貫く。
ワムウは驚異的なスピードで逃れた後だった。
「チィ…………！」舌打ちするエシディシ。
「柱の一族」であれば、あの程度の体術はさして珍しいものではない。エシディシもそれは予想していた。
ワムウもただ逃げたわけではないだろう。あくまで「攻撃」のための手段に過ぎない。ヤツはそういう男だ。
己の能力。戦場の地形。負わされた傷でさえも……すべてを利用して勝利を掴む。
それ故の「戦闘の天才」。
どこから来る？
エシディシは笑みを崩さずにはいたが、冷や汗が伝うのを感じた。
ズズ……
エシディシの背後の岩山から、ワムウの両腕が伸びてきた。
「…………やはりそこかァ！」
エシディシは振り返りもせずニヤリと笑った。
ギャロン！
ワムウの腕が大きく振りかぶった。風の流法「神砂嵐」！
が……腕の動きはそこで止まった。
ビシィ！
エシディシの足の爪から伸びた無数の血管針が、両腕に絡みつき動きを封じている！
「……くっくっく。その程度なのかワムウよ……」
岩山から飛び出したまま、身動きの取れなくなったワムウの腕を見下ろし、エシディシは一気に間合いを詰めた。
「『炎の流法』を使うまでもないなァ！ おれの拳で岩壁ごと、貴様の脳天をブチ砕いてくれるわッ！」
４．遠戦
――法に曰く、「遠くして之に近きを示す」
バグォアッ！！
エシディシの拳が、岩山ごとワムウを打ち砕いた！…………かに見えたが。
「！？」エシディシは目を見開いた。
自分の繰り出した血管針は、確かにワムウの両腕を捕えている……『両腕だけ』を。
そこにはワムウの両腕しかなかった。
「ハッ！？」
エシディシが振り返ると、腕のないワムウの巨体が迫っている！
ドオァァァッ！！
激流に飲まれた巨木のごとき、力強い回し蹴りがエシディシの右肩に深く食い込んだ！
「ＧＡＧＹＹＹＹＡＡＡＡＡＨＨＨＨＨＨッ！！！！」
ドギュボギバギべギョ……！！
鉛の塊を叩き付けられたような衝撃と共に、エシディシの肉体が肩から潰れていく。
「…………フゥゥアッ！！」
ワムウは気迫のこもった咆哮と共に、エシディシの肩を潰した足をさらに振り下ろし、心臓をも蹴り砕こうとした。
しかし、エシディシも黙ってそれを許すはずがない。
両手から伸ばした血管針を、それこそ鋭いニードルのように繰り出し、ワムウの胸板にに突き刺した！
「ぐッ！」内部にエシディシの血液を送り込まれれば、いかなワムウとて無事には済まない。
ワムウが一瞬だけひるんだスキを突き、エシディシは肉体をゴムのように引き伸ばして、蹴りの軌道から逃れた。
間合いが離れたのを見て、ワムウも両肩から血管針を伸ばし、先ほど切断した両腕を元通りに接続する。
その胸板は、「怪焔王の流法」を受けたためか、シューシューと焼けただれて湯気を立てていた。
「お……おのれェワムウゥゥ……！ おのれェェェェェェェェ……」
一方のエシディシは、蹴り潰された肩を血管を使って強引に縫合しつつ、病的なまでに充血した眼でワムウを睨みつけている。
怒るか。ワムウはそう思った。エシディシは自分でも己の事を「荒っぽい性格」だと認めている。
故に、怒りが頂点に達した時、気分をリラックスさせるために「泣く」のだ。泣く事でストレスを発散させ、平常心を取り戻す。
（エシディシ様ならそうする筈だ……）
だが、次の瞬間……エシディシの口元はにわかに吊り上がった。
「うっくっくっくっく……
ウヒャヒャヒャヒャハハハハクククカカカカ…………！！」
けたたましい不気味な笑い声が、洞窟内にこだました。
Ｔｏ Ｂｅ Ｃｏｎｔｉｎｕｅｄ ！！
＜ 今回の番外編を書くにあたって、参考にした対戦 ＞
Battle13 「ペットショップ VS 広瀬康一」
Battle18 「偽テニール船長 VS 黄の節制の男」
Battle19 「プロシュート兄貴 VS ワムウ」
Battle29 「トリッシュ VS アヴドゥル」
Battle30 「東方仗助 VS ンドゥール」
Battle41 「ジョナサン VS グレーフライ」
Battle44（Ｄ） 「ダニエル・Ｊ・ダービー VS ワムウ」
Battle64 「花京院典明 VS 墳上裕也」
Battle66 「スーパートライアスロン」
この小説は、上記の対戦小説を基に、邪悪なるＬ氏ーどが暴走しまくりで書いてやがります。
執筆及び、掲載を許可して下さったＹＢさんに最大級の謝辞を。
花京院、アヴドゥル、仗助、トリッシュ、ワムウ、大友流、リトル・ヤー、ヨー・ヨー、ペット・ショップ、エシディシ、逆位置の世界、賢者ザフー、ついでにドノヴァン他大勢にもありがとう！ あと、マガークとメーボはお気の毒で申し訳ない。
トップへ戻る